サードパーティ・リスクマネジメント 2025-03-26
サードパーティ・リスクマネジメント(TPRM:Third-Party Risk Management)とは、企業がビジネス・パートナーや取引先といった第三者にかかわるリスクを一元的・継続的に評価・管理する仕組みのことです。
サプライチェーン・セキュリティの一環として、サードパーティのリスクマネジメントを行うことが求められています。
なぜサードパーティ・リスクマネジメントが重要なのか
企業のサプライチェーンは自社のリソースだけで完成させることはできず、多くの業務を外部の企業・サービスに依存しているケースが増えています。
そのため、サプライチェーン・セキュリティ向上のために、自社でどれだけ堅固な対策をしていても、取引先や提携先がセキュリティ上の弱点を抱えていれば、情報漏洩や不正アクセスなどのリスクは一気に高まります。
また、法規制やコンプライアンス要件(GDPR、ISO 規格、個人情報保護法など)も年々強化され、自社だけでなく第三者のリスク対策も含めて責任を負わなければならない状況が一般的になっています。
第三者(サードパーティ)とは
第三者とはビジネス・パートナーや取引先のことで、たとえば以下のような企業・組織が該当します。
サプライヤー・外部委託先
- 製品や部品を供給するサプライヤーです。
- アウトソーシング先としてのコールセンター、システム開発会社、人事業務 BPO などが挙げられます。
IT ベンダー
- クラウドサービスや SaaS を提供する IT 企業、セキュリティ管理を代行する MSP などが挙げられます。
販売代理店・パートナー企業
- 販売代理店やビジネスパートナー、ジョイントベンチャー先が挙げられます。
サードパーティの主なリスク
情報漏洩リスク
外部企業のセキュリティ体制が不十分な場合、自社の機密情報や顧客データが漏洩する恐れがあります。
コンプライアンスリスク
取引先が法規制に違反している場合、自社も連帯して責任を問われる可能性があります。
オペレーショナルリスク
サプライヤーの生産停止やサービス障害により、自社の事業継続に支障が出る場合があります。
サイバー攻撃の足がかり
攻撃者がセキュリティの脆弱な協力企業を経由して、自社ネットワークに侵入するケースが増えています。
サードパーティ・リスクマネジメントのステップ
- サードパーティの把握・分類
- どの部署がどの取引先と契約しているのか、全体像を可視化する。
- 取引先の業種・提供サービス・データ取扱範囲などを整理し、リスクレベルを分類。
- リスク評価(デューデリジェンス)
- 取引先のセキュリティ体制、コンプライアンス、財務状況、評判などを調査・評価する。
- チェックリストや質問票、オンサイト監査、外部データベース照会などを活用。
- リスク低減策の実施
- リスク評価結果を踏まえ、必要に応じて契約条項の見直し・追加、セキュリティ要件の強化、教育支援を行う。
- リスクレベルが高い取引先との契約は再検討する場合もある。
- 継続モニタリング
- ビジネス環境やサプライヤー側の状況は常に変化するため、一度の評価で終わらず定期的・自動的にモニタリングを実施する。
- 新たな脆弱性や法規制の変更、企業買収などでリスクが急変する可能性に備える。
- レポーティング・意思決定
- 経営層やセキュリティ部門が素早くアクションを取れるよう、リスク評価の結果を分かりやすい形で報告する。
近年のトレンド
自動化の加速
従来はスプレッドシートや手動による調査が中心だったサードパーティ・リスクマネジメントですが、AI や機械学習、外部の脅威インテリジェンスを組み合わせることで、効率的・リアルタイムに評価できるようになりました。
包括的なリスク管理
サイバーセキュリティだけではなく、ESG リスク(環境・社会・ガバナンス)やレピュテーションリスク(評判)など、さまざまな観点を統合的に評価する傾向が強まっています。
規制当局の視点
金融機関や医療分野など規制の厳しい業界では、第三者のリスク評価体制を整備するよう監査やガイドラインで求められてきました。
しかし、サイバーセキュリティ基本法や不正アクセス禁止法、個人情報保護法、そして 2025 年夏を目指すサイバー対処能力強化法案など、サイバーセキュリティ関連の規制が整備され、サードパーティ・リスクマネジメントの重要性がさらに高まっています。